働き者



NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、WHOのメディカルオフィサー進藤奈邦子がゲスト。感染症の流行を防ぐために、世界中を駆け廻っている。まさに命がけの仕事だ。二人の子どもを残していくのが、唯一の心残り。息子と娘にいつも言い聞かせている。
もしお母さんが死んじゃっても、これだけは忘れるんじゃないよ。とにかく、怠け者はダメだよ。人間は働き者じゃなきゃいけないよ。自分のことは自分でできなくちゃいけない。お母さんが死んでも、これだけは忘れないでね。
なんだか、ジーンときてしまった。今は楽して金儲けできることがいいみたいな風潮が強い。こんなこと言う親は少ないだろうな。

亡くなった弟さんにくらべて、自分のことを性格がよくないとか言ってたけど、仕事で発揮する粘り強い説得力といい、ただ感心するばかり。

叱られた子どもが、あとでカメラに向かってなまいきな発言したのを聞きつけ、進藤がむっとしてるところとか、うまく表情をとらえていた。

緒方貞子が海外在住の若者たちに、帰国して日本のために働きなさいとアドバイスしていると聞いたことがある。彼らにしてみれば、日本の居心地が悪かったから外に出たのだろう。自分を重用してくれたわけでもない国に、ただ自分が生まれたところという理由だけで、帰国して身を粉にして働く義理なんかない。しかし、それをあえて選択するのがエリートなのかもしれない。

エリートとは、
欲望を自制する力をもち、謙虚で志のある人(丹羽宇一郎)
「自分に厳しく、相手にはやさしくする自己」(霍見芳浩)
「大変な学問技術上の苦行を強いられる上、しかも報われることの少ない、しかも場合によっては一般大衆の不興を買うことを恐れず、憎まれても信念を曲げないような人々」(鈴木孝夫)

国境の枠にとらわれず、地球人として働く進藤奈邦子であった。

(2006-03-02)